東京高等裁判所 昭和41年(ツ)25号 判決
原判決は、被上告人(被控訴人)は、昭和二二年六月二日頃本件農地を訴外赤池喜好に売渡したが、これにつき所管知事の許可を得なかつた事実を確定した上、「上告人(控訴人)が昭和二七年五月一八日右赤池から本件農地を買受け、昭和三四年五月二〇日静岡県知事において被上告人より上告人に対し直接本件農地の売買がなされたものとして右売買に対する許可をなしたから、上告人は適法に本件農地の所有権を取得した」旨の主張に対し、右許可は、被上告人から赤池へ、赤池から上告人へとなされた農地売買契約の事実に合致しない内容の売買に対しなされたものであるから無効であり、上告人は本件農地の所有権を取得しないと判示する。
しかしながら、農地法第三条により農地の所有権の移転につき都道府県知事の許可を要するものとした趣旨は、農業政策上の見地から、農地の所有権を取得する者の資格を審査し、その結果農地の所有権を失う者における事情をも配慮の上、当該農地所有権の移動を承認するのが適当か否かを都道府県知事をして判断させ、もつて農業政策の適正な運営を期しようとするものであるから、本件において、静岡県知事が許可にあたり審査勘案すべきことは、本件農地の所有権を取得しようとする上告人の資格とその結果所有権を失うべき被上告人における事情とに外ならない。そうであれば、被上告人と上告人間の所有権移転が直接でないという一事によつて上告人主張のような静岡県知事の許可があつても被上告人と上告人間に権利移転の効力を生ずるに由がないとした原判決は、法律の解釈を誤つた違法があるといわなければならず、原判決は、この点において破棄を免れない。
(岡部 川添 坂井)